MRSAとは? 症状は? わかりやすく簡単に解説
院内感染の原因菌でもっとも発症の多い多剤耐性菌、MRSA(エムアールエスエー)。医師の皆さんでも意外にこのMRSAという病原菌についてよく知らないという方がおられます。
クリニックを経営するうえでは院内感染についての知識は必須ですし、院内感染について知ることはMRSAについて知ることだと言っても過言ではありません。それぐらい重要な薬剤耐性菌です。
このページではそんなMRSAについてわかりやすく解説してみたいと思います。
■MRSAとは?
MRSAとは別名をメチシリン耐性黄色ブドウ球菌といい、Methicillin-resistant Staphylococcus aureusの頭文字からMRSAと呼ばれています。
日本では、1990年に出版されたノンフィクション書籍『院内感染』で有名になりました。
この書籍は、東大病院である手術に成功したもののMRSAに感染したことで夫を亡くした妻が、病院の衛生管理の杜撰さを訴えるために著したもので、それ以後、MRSAや院内感染という言葉が一般に広まりました。
この書籍のお陰で、日本ではそれ以後、医療の現場で本格的に対策がとられるようになりました。
ちなみに、MRSAは、そもそも黄色ブドウ球菌という菌で、成人の健康人であっても30%前後が鼻腔内や皮膚等に保菌している菌になります。つまり、免疫力が大きく低下していない健康な身体の人であれば何の疾患も引き起こさないものなのです。
この黄色ブドウ球菌が、やがて病院などにおいてペニシリンに耐性を持つようになり、1941年代に「ペニシリン耐性黄色ブドウ球菌」と呼ばれる、ペニシリンに耐性を持った黄色ブドウ球菌が確認されました。
ペニシリンとは、世界で初めて開発された抗生剤で、感染症治療に非常に有効であることから広く普及し、病院等で使われることとなりましたが、やがて病原菌の側でペニシリンに耐性を持つようになった、というわけです。
その後、1959年に、ペニシリン耐性を持つ菌に対しメチシリンという特効薬が開発されましたが、さらにペニシリン耐性黄色ブドウ球菌がメチシリンにも耐性を持つにいたり、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌=MRSAとなったわけです。
つまり、MRSAとはペニシリンもメチシリンも効かない黄色ブドウ球菌だというわけです。
ちなみに、その後MRSAは、上記二つの抗生剤以外にもいくつもの抗生剤に耐性を持つに至っていて、「多剤耐性菌」と呼ばれています。
治療にはバンコマイシン等の薬剤が使用されます。
■黄色ブドウ球菌とは?
以上のように耐性を持つに至った黄色ブドウ球菌ですが、ペニシリンやメチシリンに耐性を持ったとはいえ、人体に害を及ぼす危険性としては、耐性を持つ以前の黄色ブドウ球菌となんら変わっていません。
つまり、健康な身体で免疫力が正常な成人にとっては何の問題もなく、時間の経過とともに身体が菌を殺してしまいます。
よって、問題なのは高齢者や乳幼児、大きな病気等で免疫力の低下した人への感染ということになります。
黄色ブドウ球菌は主にそれら免疫力の低い人への感染により、化膿性疾患、髄膜炎、肺炎、腸管感染、毒素性ショック症候群などを起こします。
また、食品中で増殖した場合には、食中毒も引き起こします。
■MRSAの症状は?
MRSAの症状も、以上のようなわけで黄色ブドウ球菌の感染による症状と同様のものになります。が、やはり、抗生物質への耐性があることから治療が思うように進まないことで重篤な症状に至る可能性があります。
より詳しい解説を引用でご紹介しましょう。
MRSAは、皮膚、呼吸器、泌尿器、腸管などさまざまな部位に感染する。その臨床症状は、発熱が共通して見られるが、感染部位によって全く異なる。皮膚では褥瘡を形成して膿を出すようになったり、呼吸器では痰が出やすくなったり、肺炎を引き起こしたり、泌尿器では膀胱炎などさまざまである。腸管では、クロストリジウム・ディフィシル腸炎との合併症が起こり、激しい下痢を起こすこともある。MRSAは、抗生物質がほとんど効かないので治療が思うように進まず、患者の抵抗力だけが頼りとなる場合が多い。抵抗力の落ちた人では、敗血症、髄膜炎、心内膜炎、骨髄炎などに陥って死亡することも少なくない。 『あなたを狙う感染症』本田武史 飯島義雄著(小学館) |
このように、抗生物質が効かないことで、本人の身体の抵抗力、免疫力頼みの治療しか施しようがないことから、それらが弱いお年寄りや赤ちゃんの感染にもっとも気を使う必要があるということになります。
■MRSAの予防方法は?
では、どのような予防方法があるのでしょうか?
歯科医院やクリニックでのMRSAの予防方法は、スタッフの手洗いやうがいの徹底はいうまでもなく、とにかく院内を清潔に保つことが挙げられます。
とくに気をつけたいのは、接触感染を防ぐために、患者が直接手で触れる部位の消毒、滅菌措置です。
それから、空気感染を防ぐために、エアコン等の空調設備の掃除やメンテナンスも重要です。
また、意外に気付かない部位として、床が挙げられます。床に付着した菌が舞い上がり、感染経路となる可能性も高いことから、床の定期的な清掃も不可欠でしょう。
上述のとおり、MRSAは健康な人の30%程度の人が保菌していることから、患者の30%が保菌した状態でクリニックに出入りしていると考えて差し支えありません。
そういった不特定多数の人たちが出入りしていると考えることで、床、空調設備、患者が触る部位への衛生的な意識を高く持って日々の清掃等を考える必要があるのです。
カリーナでは、歯科医院や調剤薬局清掃の豊富な実績から、MRSAをはじめとする薬剤耐性菌にも対応した定期清掃を行っています。
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参考書籍
本田武司・飯島義雄著/あなたを狙う感染症(小学館)
フィード認定技術者・小林純 監修