クリニックの院内感染・原因菌の種類は?順位と対処法を解説

クリニックの院内感染・原因菌の種類と順位・対処法は?

歯科医院やクリニック経営にとって致命的なダメージとなる「院内感染」。多剤耐性菌による感染が、新聞やニュースでも時々大きく取り上げられます。
その度にいちいちドキッとしないためにも、正しい知識を身につけて、日々の診療や清掃等の対処が行えるよう、このページでは院内感染の原因菌について詳しく見ていこうと思います。

■多剤耐性菌とは?
まず基本的な知識から確認しましょう。

1928年にペニシリンが開発されて以来、しばらく、一般的に人類は感染症を克服したかに思われていました。が、やがて1960年代になると、「奇跡の薬」とまでいわれていたペニシリンに耐性を持つ菌が現れました。

そして、そのようなペニシリン耐性菌に対抗して、それらにも有効なメチシリンという抗生物質が開発されたのですが、しばらくすると、さらにそのメチシリンにも耐性を持つ菌が現れるという事態が起こりました。

近年でもまだ、このような病原菌と人間のいたちごっこが繰り返されている状態にあり、このような状態が今後も続いていくものと思われています。

そして、そのようないたちごっこの末に生まれたのが、多剤耐性菌と呼ばれる、さまざまな薬剤に耐性を持ってしまった病原菌ということになります。

では、多剤耐性菌の種類を詳しく見てみましょう。

■原因菌の種類は?

院内感染の原因菌の種類はさまざまですが、ここではその中から昨今「院内感染」の原因菌として話題になっている多剤耐性菌の代表的なものについて解説しましょう。

●MRSA(メチシリン耐性黄色ブドウ球菌)
院内感染のほとんどを占めるのが、このMRSA(エムアールエスエー)という原因菌です。

このMRSAは、上述したように、まずペニシリンに耐性を持ったペニシリン耐性黄色ブドウ球菌というものが生まれ、メチシリンが開発されると、さらにそのメチシリンに対しても耐性を持つものが出現しました。それがMRSAという病原菌になります。MRSAは、薬剤耐性菌の代表的な存在です。

通常、健康な人であれば何ともないのですが、高齢者などの免疫力の低い人が感染すると、菌血症、心内膜炎、肺炎を起こすことがあり、最悪、死に至ります。治療にはバンコマイシンという抗生物質が使われます。

●PRSP(ペニシリン耐性肺炎球菌)
MRSAに次いで院内感染の病原菌となっているのが、PRSPです。

こちらもやはり、肺炎や髄膜炎、中耳炎の原因菌である肺炎球菌がペニシリンに耐性を持ってしまった結果、出現したものということになります。

この菌は、ペニシリン系の抗生物質だけでなく多くの薬剤に耐性があることでも知られています。

予防方法としては、肺炎球菌ワクチンの投与が挙げられます。

こちらも基本的に健康な大人には問題のない病原菌で、お年寄りや子供に注意が必要となります。

●MDRP(多剤耐性緑膿菌)
このMDRPは、家庭の水回りにいる緑膿菌という病原菌が、医療現場で各種の消毒薬、抗生物質等の薬剤に耐性を持ったものになります。そのため、MDRPは病院やクリニックにしか通常は存在しないものになります。

MRSAやPRSPほどではないものの、院内感染の原因菌になっています。

MDRPも健康人にはほぼ問題のない菌で、高齢者等免疫力の低下している人の感染のみが危険な病原菌になります。

■院内感染の原因菌(多剤耐性菌)の順位
では次に、院内感染の病原菌として、どの多剤耐性菌が多いのかという点について解説します。

結論からいいますと、上で紹介した3つが主な病原菌になりますが、そのなかでもMRSAが突出して多くなっています。

2008年〜2011年までのデータを示すと以下のようになります。

<薬剤耐性菌の新規患者発生状況>
  発症患者数 MRSA PRSP MDRP
2008 16,755人 14,385 2,147 228
2009 17,065人 15,093 1749 219
2010 14,784人 13,178 1,419 169
2011 18,856人 17,162 1,380 303

小林一寛著/靭帯に危ない細菌・ウイルス(PHPサイエンス・ワールド新書)より引用

以上のように、断トツで1位がMRSA、次いでPRSP、MDRPの順となっています。


■院内感染の対処法

では次に、院内感染の対処法について解説しましょう。

院内感染を引き起こす原因菌は、多剤耐性菌といえども、通常、健康人が保菌していても問題ないものがほとんどです。高齢者や乳幼児など、抵抗力のない患者が主に感染し、重篤な症状に至ります。

ですので、何の症状もない人でも保菌している可能性があることから、まったく何の症状も現れていない患者が外部から菌を持ち込むこともあるため油断することができないものです。

対処法として一番気をつけなければならない点は、なんといっても常にクリニック内を清潔に保つことです。これはどの科のクリニックにも共通していえることでしょう。

そもそも、院内感染の問題というのは、原因菌の強さや怖さが問題なのではなく、クリニック等の病院の管理体制の問題だといえるのです。

ですから、各クリニックや病院の清掃が行き届いており、管理がしっかりとしたものであればそれほど恐れるものではないのです。

とくに気をつけなければならないところは、ドアノブなどの患者が手で触る部分や、水回り、エアコン等の空調設備になります。この部分の清掃を怠ると接触感染や空気感染等が起こりやすくなります。

これらの対処法は、多剤耐性菌以外のインフルエンザやノロウイルスなどの予防としても効果的です。

Carinaでは、歯科医院や調剤薬局等の豊富な施行実績で培った、院内感染を未然に防ぐ殺菌、抗菌ノウハウを活かしたクリニック向け清掃サービスを展開しています。

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参考文献
小林一寛著/靭帯に危ない細菌・ウイルス(PHPサイエンス・ワールド新書)
本田武司・飯島義雄著/あなたを狙う感染症(小学館)

フィード認定技術者・小林純 監修

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